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3/17(fri,) 2017

ポール・ギャリコの名著「猫語の教科書」を読む。25歳の頃に知った本だけど、いつか読もうと思いながら25年以上も読まずにいて、ようやく読んだ。あまり面白いとは思わなかったな。もっと早く読めばよかったのか?

ギャリコさんは長年に渡って猫と暮らしていたらしく、猫に対する深い愛情と洞察が感じられるし、実は人は猫の意のままに操縦されているのだと云う視点もよく分かるけど、なんとなく「こう云う事」って猫飼えばみんな思うんじゃない?って印象を越えるに至っていない気がする。でもその機微を弁えた上品なところがこの本のいいところなのかも知れない。と云うかギャリコさんの他の作品にも共通すると思う。

人気のある作品だし、ギャリコさんは「スノーグース」や「雪のひとひら」など心に残る作品を書いた人だから、どうして自分にはこの本がいまひとつだったのか、しばし悩んだ末ひとつ思い当たった。猫を語り部にした本なら「我が輩は猫である」と云う別格の名著をすでに読んでいる所為かと。夏目漱石ってやっぱスゴいんだね。

ここまで書いておいてなんだけど、「猫語の教科書」にはとても共感した一節があった。そのまま引用するのはあえて避けて大雑把に自分の言葉で書くけど、

「人間は愛を後悔したり裏切ったりするけれど、
裏切りや後悔が動物に触れる事はない」

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3/19(sun,) 2017

チャック・ベリーが90歳で亡くなりました。この日記では度々チャック・ベリーについて書いていたし、思えば2004年にこの日記を書き始めた最初の記事もチャック・ベリーについてだったはず。

中学生の頃「チャック・ベリーの曲を弾いてみたい」がギターを始めた動機でした。高校生の頃初めて聴きに行った外タレのコンサートは渋谷公会堂のチャック・ベリーでした。近年のコンサートの様子も時々YouTubeで検索しては観ていたのですが、最新の動画は2014年までなので最近どうしてるんだろう?と少し心配でした。昨年秋頃に「2017年春にチャック・ベリーの新譜がリリースされる。新録、新曲で構成される」とのアナウンスを知って嬉しかった反面、励まさなきゃならない事情があるのでは?とも思いました。長生きしたと思うし、心配でもあったから、あ〜そうか〜、、って感じなんだけど、でもやっぱり残念です。

誰もが知っているギターリフと、楽器を手にして一週間で音楽を楽しむ方法を発明したとも云われる独特の奏法がロックンロールの代名詞になりました。でもそれ以上に歌詞が素晴らしいです。1950年代、まだアメリカに夢がたくさん在った頃、大衆の関心事、車やデート、給料日、仕事、を完璧と云っていいくらい見事に言葉をリズムに乗せて歌いました。本人が「皆が興味を持ってる事を歌えば、皆聴くと思った」と云っている様に全く無駄のないソングライティングは後のビートルズやストーンズ、その他大勢に大きな影響を与えたと同時に、当時のアメリカの風俗史としても確かなものだと思います。白人、老若男女を含めて対象にしたので、一部の黒人からは反感をかったのかも知れませんけれど(映画「真夏の夜のジャズ」はその一端を垣間見せているかも知れません)。

「メンフィステネシー」「スイートリトルシックスティーン」「リトルクイニー」「トゥーマッチモンキービジネス」その他全てのオリジナル曲が本当に素晴らしいです。でも全てを紹介するのは無理なので一曲だけ。冒頭の「長距離電話の交換手を頼む」や「その子の家はサウスサイドにあって、峠の上にあるんだ」とか痺れるくらい見事だと思います。ポコペンさんが書いた「19」の「大きな仕事を任されている」って云うフレーズも同様。言葉がリズムに乗って生きているってこう云う事だと思います。やっぱり僕にとってロックンロールは「言葉」ですね。

「Memphis Tennessee」

長距離電話の案内係を、テネシー州のメンフィスをおれに頼む
こっちに連絡を取りたがってる一団がいるんだ
そいつを見つけるのに手を貸してくれ

彼女、番号は言わなかったんだが、かけて来たのが誰かは、おれにはわかるんだ
というのも、叔父貴が伝言を受けて、それを壁に書きつけといてくれたんだ

案内係さん、おれに力を貸してくれ、マリーに連絡をとりたいんだ
テネシー州のメンフィスなんかから、こっちまで電話をかけてくるなんて
彼女ぐらいしかいないんだ

その子の家はサウスサイドにあって、峠の上にあるんだ
ミシシッピー・ブリッジからほんの半マイルのとこなんだ

*

案内係さん、おれの力になってくれよ
このぐらいしか、あとは何にも言い足すことはないんだ

彼女に会えなくなってしまって
一緒に楽しくやることもできなくなった

なのに、おれたちははなればなれにされちゃってねえ
彼女のオフクロが許してくれなくってな
そう、おれたちの幸せな家庭が引き裂かれてしまったんだ

テネシー州のメンフィスでな

*

最後にマリーに会ったときに、あの子、おれに手を振ってくれてな
頬には、早く帰って来てねって、あの子の瞳からこぼれた涙があったよ

マリーってのはまだほんの6歳なんだ、案内係さん、頼むぜ
何とか彼女に繋いでくれよ、テネシー州メンフィスにいるんだ

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3/23(thu,) 2017

ここ数日は相変わらず部屋で黙々絵を描いています。技術的な面で時々思うこと。例えば何気なく描いた一本の線がとてもよい塩梅だった。でもあまりに何気なくだったので線が途中で少し擦れてしまった。上から二度、三度、なぞって線のよいニュアンスを損なわないように筆を重ねてみる。ヨシ、ヨシ、ヨシッと。この三度目の「ヨシ」が余分だった。線が濃くなりすぎて折角のよいニュアンスが失われてしまった。僕はこう云う場合たいていは絵具が乾かないうちに拭き取ってもう一回同じことをやり直す。やり直すと最初の「何気なさ故のよいニュアンス」を再生することは出来ないけれど、やり過ぎた重ね塗りよりはマシな状態に復元してその作業を終える。こう云うことは絵を描いていると度々ある。そしてこう思う。「余計なことまでせずにおく事」は重要な技術だなと。

絵であれなんであれ「前回より少しでもマシなものを」と取り組めばどうしても「やらずに済ませてしまった失敗」より「やり過ぎてしまった失敗」が多いのは否めない。あと一歩のところで「やらずに済ます」のはとても難しいけど、「あそこでやめておけばよかった」と云う後悔も随分経験してきたので、最近はほんの少しやり過ぎを回避出来るようになった気がしている。こんな事を書いていると、なんだか自分が年寄りっぽく思えてイヤなんだけど。

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3/25(sat,) 2017

先日見知らぬ方から「Wayback Machine」と云うサイトに行けば、過去の記事が再生出来ますよ、と教えてもらったので、このサイトの旧いページを探してみたら、公開を始めた2004年の記事が見つかった。先日書いたように一回目の日記はチャック・ベリーについて。13年前の日記だけど内容は今と大して変わらない。この日記を書き始めた時僕は40歳だったのだ、。つくづく進歩がないなと思うけど仕方がない。でもチャック・ベリーが自分の音楽を大切に演奏してなかった、と云うのは今は違うなと思う。ともかく以下に引用してみます。まさかチャック・ベリーが亡くなる時までこの日記を書くとは思ってなかったな。せいぜい半年くらいでイヤになってやめるだろうと思ってた。

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今日から絵日記を書いてみる事にした。でも僕は生まれてから一度も日記を付ける習慣を持った事がないのでいつまで書けるかわからないし毎日書く事も出来ないと思う。たいした出来事もなく毎日が過ぎていくので適当に思い付いた事を書いてみよう。

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1/8(thu,) 2004

で、今日はチャックベリー。家の近所にはチャックベリーが住んでいる。チャックベリーを知っている人、十人がこの人を見たら七人は本物と見間違えるに違いない。職業はまちがいなく土方。いつもニッカポッカにドカジャンを着て保温できるお弁当箱
みたいなのを持ってコンビニでビールを買っている。いつもといっても僕がこの町にすんでいる三年間に三回くらいしか会った事はない。今日は久しぶりに会えて嬉しかった。たぶんロックは好きじゃないだろう。っていうか知らないだろうな。音楽が好きだったとしてもジャズか演歌かマンボだろう。CDプレイヤーはもっていないだろう。音楽はラジオかテレビで聴くタイプ。きっと独身で五十五歳くらい。日本人。

僕はこの人を最初に見たとき「なんでこのひとはロックンローラーじゃないんだろう。」と思ったのだけれど、本当にそうなのかな。1981年のチャックベリー初来日公演を渋谷公会堂で見た。始めて見た外タレのコンサート。チャックベリーはまるでゴロツキみたいだった。演奏は良いのか悪いのかよくわからなかった。っていうかいっぱい間違えていた。僕はチャックベリーが本当に大好きだった。毎日家で聴いていた大切な音楽を生で聴けるんだし、何しろ始めての外タレだし凄く楽しみにしていた。きっとそんなひとがあそこにたくさん居たと思う。でもチャックベリーはそんな事気にしていない。自分の音楽を大切に演奏しないのの見本みたいな演奏だった。ただギターを弾いてお客をたのしませるパフォーマンスをしてお金を稼ぐ。ただ道路に穴を掘ってお金を稼ぐ。なんでチャックベリーは土方じゃないんだろう。

でも、どちらでも同じ事。チャックベリーはメンフィステネシーをつくった人なんだ。チャックベリーの曲をカバーした人は有名無名を問わず数えきれないほどいるけれど、チャックベリーの演奏に似ているものはたぶんひとつもない。

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3/27(mon,) 2017

昨日今日は寒かったですね。昨日で大きな絵を描く作業は一段落したので、今日からsakanaの曲目のアレンジを考えています。今度の日曜日(4月2日)、神保町の試聴室にてsakanaのライブがあります。戸井安代さん率いる「畦」さんとご一緒します。楽しみです。是非いらしてくださいね。詳細はlive scheduleのページで確認してください。

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