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11/15(thu,) 2018

先日書いた角田さんの本(私の容れもの)の中に、こんな記述があった。「地味な変化なので誰も気付いていないと思うけど、自分は加齢と共に食べ方がきたなくなった。時々うっかり食べものをこぼしたりする。若い時だってあったけどそれは「あ、こぼす!」って直前に分かる事だった。今はちゃんと食べものを口に運んだはずなのにこぼす。身体を思った通りに正確に動かす事が出来なくなって来たのだと思う」と云うような事が書いてあった。この話は哀しいながらもよく解る。食べ方に限らず、所作が若い頃のようにスムーズではなくなったと思う。単純な動作なので多少ぎこちなくても支障はないのだけど、心の中で「あれ、もっとサラッと出来てたよな、以前は」と思う事がいろいろある。

そしてもっと考えを進めてみれば、若い頃、おっさん、おばさんを見て、「あ〜、歳を取ると細かい事が面倒になって恥じらいもなくなってあ〜なるわけか〜」と思っていた事が、そうではなく様々な感覚や知覚の衰えによって仕方なくそうなっている場合が多いのだと気付く。そう、先に歳を取った人間は若者にいちいち云い訳をしないだけなのだ。だって、間もなく若者たちも同じ事を思うのだから。

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11/16(fri,) 2018

子供の頃、人気者と云えば面白い事をして周りを笑わせるヤツかケンカの強いヤツ、走るのが速いヤツだった。云うまでもなく僕はそう云う人を見ていいな〜と思っている目立たない子供だった。もう少し大きくなって来ると、勉強が出来るヤツ、リーダーシップを発揮して皆を引っぱるようなタイプが人気者。社会に出ればどんな職種であれ仕事が出来るヤツ、音楽家ならよい曲を作り、演奏力がある人、絵を描く人なら非凡な発想力とそれを視覚表現として実現出来る画力のある人、無論それを達成する努力やそれを鼻にかけないさり気ない人間性などを含めて周りは惹かれる。僕は子供の頃と変わらずそう云う人を見ていいな〜と憧れているだけの大人になった。今の歳になれば、演奏力も画力もどうでもよくなってたいした魅力には思わない。ただ明るく朗らかで、生まれてから一度も傷付けられた事がないように笑う、まだ会った事のない誰かに憧れている。

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11/18(sun,) 2018

昨日(17日)〜岡山のヒバリ照ラスにてイラスト展をさせてもらっています。お店の方がいい感じに設営してくださって嬉しいです。期間は2週間、最終日近くにはsakanaのライブとトークショー?もあります。お近くの方は是非いらしてくださいね。詳細はlive scheduleのページでご確認ください。

もう一つ追記でお知らせを。11月9日に下北沢leteにて山際英樹さんと演奏した動画を知人がYouTubeにアップしてくださったのでよかったら聴いてみてください。

山際英樹+西脇一弘 2018/11/09 下北沢lete
https://www.youtube.com/playlist?list=PLGtsIUy9SndzAJMaDtp9Yi-e3d05zxOwa

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11/19(mon,) 2018

当たり前のことだけど、人を疑うより信じる事の方が遥かに難しい。そして猜疑心や意地悪などネガティブな感情は周りから何を云われてもビクともしない強靭さがあるけど、信頼や好意のようなポジティブな感情はちょっとしたことで簡単に傷付く。だから悪意なんてぞんざいに扱って構わない。美しい思いは傷付けないように労らなきゃいけない。愛や信頼が強いものだなんてさっぱり意味が分からない。そんな勘違いがあるから人は手元にある愛や信頼が本物の強いものかどうか確かめようとぞんざいに扱って傷付け合うのじゃないかしら?強いこと、タフなこと、が善いなんていったい誰が決めたの?脆弱じゃ生きられない世の中を何故誰も憎まないの?

とは云え、世の中を憂いている暇などない。やりたいことをやらなくちゃ。

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11/20(tue,) 2018

夕暮れに駅前のスーパーまで買い物に行く。ウチから駅までの道程は急な坂の上り下りをして一山越えなければならない。

山陰の小さな町で育った子供の頃、こんなうす寒い夕暮れの中を田んぼの畦道を通って早足で学校から帰った。明るいうちに帰ってきなさいと母に云われていたのに、校庭で友達と遊んでいるうちに随分遅くなってしまった。暮れゆく秋の乾いた空の下、誰かに名前を呼ばれた気がして、後ろを振り返ると誰もいなかった。遥か遠くに朧げな山々と、刈り取られたあとの田んぼと紫色の空があった。あの時名前を呼んだのはまだ生まれる前の自分か、もう生きた後の自分だったのかも知れない。たった10歳に満たない子供がこんなことを思うのはちゃんちゃらおかしな話なのだが、僕はあの時振り返った瞬間に、人生はあっという間に過ぎ行くと感じて、途方に暮れたまましばらくぼんやりと突っ立っていた。

スーパーからの帰り道、ひっそりとしみ込むような夕闇の中で急な坂道を振り返る。斜面に面した数々の住宅の灯りの群れの向こう側に、あの時と同じ色の空があった。

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